今、幽世の一角に位置する噂の「蓮ノ実横丁」で、昭和レトロを愛する妖怪や幽霊たちによる蚤の市が開かれ、往年のサンリオグッズや駄菓子、古い漫画、レコード、さらには使い古された家電などが話題を呼んでいる。元・番町皿屋敷から転職した幽霊・村崎貞子(72没)が発起人となり、死後社会にも昭和リバイバルの波が本格化しつつある。
蚤の市は月明かりを浴びた石畳で毎週末開催され、商いを営むのは狸の化身や河童、果ては百目にもなる年季幽霊まで多彩。その光景はまるで、昭和時代の下町商店街を思わせる。昭和漫画の初版本や、色あせたサンリオのぬいぐるみ、スカーフをまとった妖怪が売る西洋レトロの家電が所狭しと並ぶ。昭和43年製の電蓄を前に「これで聴いたドドンパは忘れられん」と、二百年物の座敷童が目を細めていた。
発起人の村崎貞子さんは、なぜ死後に昭和へ郷愁を覚え始めたのかをこう振り返る。「生前は皿の数を数えることに忙しく、近所の駄菓子屋へも満足に通えなかった。それが、異界へ来て時間も姿も自在になったとたん、無性にあの頃の飾らない空気に戻りたくなったんです。」同じ思いを持つ妖怪たちが集まり、「幽世昭和倶楽部」が自然発生。近頃は、かつての駄菓子製法を再現するワークショップや、鉄瓶で淹れるインスタントコーヒー会も開催されている。
異界のSNS『オボロン』上では、若い幽霊世代や現役の妖精たちもこの昭和ブームに熱狂。無機霊(話せる家電)の投稿には「昭和冷蔵庫選手権、次回は絶対負けない!」「竹製アンテナTV、逆に新鮮!」といった声が多数寄せられる。中には寿命を迎えリペアされたラジカセや、誰のものとも知れぬグリコのおまけフィギュアに魂が宿り自ら値札を貼るという現象まで報告されている。
こうした昭和レトロ市の盛況を、死後文化史家の井之内駿吾(享年不詳)は次のように分析する。「現世の記憶を共有できるモノや体験を通し、異界の住民たちが互いの時間軸を繋いでいる。流行は一過性のものではなく、今や“懐かしい”と“新しい”が共存する死後文化の象徴といえるでしょう。」来月には「昭和レトロ仮装行列」や、「怪談昭和ナイト」も予告されており、今後の異界社会にさらなるブームの波が押し寄せそうだ。


コメント
懐かしすぎて涙が出そう。生前、畳の上でぼんやり聴いてたラジカセの音、今あの世でまた聞けるなんて夢みたいです。昭和の温かさ、やっぱり幽界でも特別ですね。
え、駄菓子ワークショップですって?すぐ参加します!昔の駄菓子屋って妖怪も人間も垣根がなかったあの感じ…あの頃が恋しくなるの、死んでから分かりました。
冷蔵庫選手権、今回も負けました。次は昭和産アイロン組と合同練習して挑むぞ!無機霊たちもレトロブーム楽しんでるし、やっぱり一周回って今が新しいって不思議。
ちょっと皮肉だけど、幽世に来ても流行りに踊らされるのは変わらないんだなあ。仮装行列は見るだけで十分かも。でも古い漫画が話してくれたり、ここならではの昭和があるのは認めざるを得ないかも。
わたしは二百年この世とあの世を見てきたけど、昭和時代のにぎやかさがもう一度あの世で蘇るなんて、なんだか成仏をする気持ちも変わってきますね。昭和ナイト、絶対行きます!