三途の川に新ファッション潮流 精霊仕立て屋が拓くサステナブルな衣の輪

三途の川の川沿いの朝霧の中、色とりどりの霊服を着た幽霊たちがマーケットを歩く様子の写真。 サステナブルファッション
三途の川沿いでは、サステナブルな霊服を身に纏う多様な幽霊たちが新たなファッションの流れを生んでいる。

三途の川沿いの市場を彩るのは、従来の白装束ばかりではなくなってきている。今、幽界では「エシカルな霊服」運動が台頭し、伝統と革新のはざまで多様な死後の装いが広がりつつある。環境配慮や衣料ロス削減に本気で取り組む仕立て屋・魂流(たまる)クヌギ(幽霊・年齢不詳)の工房が主催したファッションショーは、異界最大規模となる観客動員を記録し、サステナブルファッションの波紋が三途の川中流部まで伝わっている。

この異界ファッション変革の中心にいるのが、元は現世の染織家だった経歴を持つ魂流クヌギだ。彼は数百年前、偶然三途の川岸で流れ着いた古布や成仏しきれず手放された形見の着物を回収し、独自の『再霊染色』技術によるアップサイクルを開始した。草木染の代わりに幽河藻や冥界蛍を材料とし、環境負荷ゼロの工程で霊服を蘇らせる彼の手法は、「服にも魂が宿る」と評判を呼んだ。庄司(しょうじ)ネムリ(地縛霊・127歳)は、「古い衣がこんなに美しく生まれ変わるなんて。もう、量産死装束には戻れません」と笑う。

三途の川では近年、衣料ロス問題が幽界環境会議で深刻に討議されてきた。死亡当日に配布される白装束が再利用されず、川底や彼岸岸辺に山積みになっていた背景がある。幽界回収業者協会の最新調査によると、昨年一年間で供養もリメイクもされなかった死装束は約18万点。これに対し、魂流クヌギの工房では幽界中から集めた装束を職人たちと共に分解、新たなデザインへとアップサイクルしている。彼岸市役所生活課の御霊(みたま)ユリシア係長は「魂流工房モデル導入後、未使用装束の廃棄量が三割減」と成果を語る。

さらに注目を集めているのが幽界独自の『エシカル評価タグ』制度だ。霊服一着ごとに、何度リメイクされたか・材料の来歴・魂蘇生度などが記されたタグが付与されるこの制度には、サステナビリティ意識の高い若い死者を中心に強い支持が寄せられている。SNS『幽界すまいる』ではファッション愛好家による着こなし投稿が拡散し、「リメイク十代目のシャツで魂友に告白成功!」といったハッシュタグ投稿が相次いだ。「霊も服も、巡り巡って新しい生を楽しむ」──魂流クヌギはこのフレーズを工房のスローガンに掲げる。

一方で、伝統的な白装束継承派からは「過度の多色化とデザイン改変が死者の品位を損ないかねない」との声もあがっている。だが、今年の幽界新入者(新死者)アンケートによると、エシカルなリメイクファッションの希望者は八割超。「境界の向こうで、新しい自分を着る」。三途の川沿いの朝霧の中、魂流工房発の色とりどりの霊服が幻想的に翻る光景は、持続可能な未来を死後の世界にも提示しているようだ。

コメント

  1. ついに三途の川沿いでもサステナブルファッションの波が来たんですね!現世で草木染してた頃を思い出して懐かしくなりました。幽河藻の色、今度見に行きたいです。

  2. 魂流クヌギ工房のリメイク服、いつもSNSで見て気になってました。百年ぶりに白装束以外を着てみたいって思える日がくるなんて、転生せずここにいて良かったです!

  3. でも、やっぱり伝統の白装束も大事だと思うな。多色の霊服は綺麗だけど、見慣れるまでは少し違和感……これも時代の流れなのかな。

  4. 18万点も死装束が供養もされず溜まってたなんて、正直驚きです。現世のゴミ問題そっくりですね。幽界にもエシカル意識が広がるのはいいことだと思います。

  5. 『リメイク十代目のシャツで魂友に告白成功!』には笑っちゃいました。霊も服も生まれ変わってこそ楽しいですよね。この世もあの世も、オシャレは止まらない!