ヤマビコ族が“もったいない林業”宣言──幽霊木工市で雑木林が再生、新生態の息吹

再生中の雑木林で、幽霊の木工職人たちと森の精霊が木工市を開いている様子の写真。 里山保全
ヤマビコ族と幽霊木工士による木工市が再生された雑木林で開かれている。

かつて名高い霊峰の中腹、雑木林の消失が危ぶまれていた幽谷町。だが今、不思議な活気が森に満ちている。声の精霊「ヤマビコ族」と山林に憑く幽霊職人たちが始めた『もったいない林業運動』が、死後の世界初となる“間伐材利用型木工市”を牽引しているのだ。環境負荷を抑えつつ、里山文化と生態系を守る取り組みに、多くの精霊や妖怪たちが注目している。

立役者はヤマビコ族リーダーの越智ロクノスケ(252)。かつては人々の掛け声に応じて生計を立てていたが、森林の荒廃とともに鳴りを潜めていた。「このままでは自分たちの棲み家も消える」と危機感を持った越智は、“間伐材”とされ捨てられていた枯れ松や倒木を再利用し、亡霊木工士ユダリヤ・ツルミ(享年67)と協力。外界の里山管理で用いられる多自然型管理手法を死後世界にも応用し、雑木林の循環型再生モデルを打ち立てたという。

画期的なのは、その木工市で取り扱われる品物だ。腐りかけの榎や廃棄予定の枝葉さえも、ヤマビコ語で歌わせると空中で自在に組み合わさり、一夜にして幽界家具や精霊向けの巣箱へと早変わり。『ささやきベンチ』『鼻歌カトラリー』『風流昆虫ホテル』といったシリーズは発売直後に品切れになるなど、SNS・死後界アカウント上で大きな話題だ。顧客である河童農家のイズナ・フブキ(霊齢41)は「新しい植生や虫たちが増え、収穫祭もにぎやか。僕らも見習って雑草を“素材”に料理するようになった」と語る。

この森林再生プロジェクトの副産物が、小動物・昆虫相の多様化だ。ヤマビコ族の音響管理により、光を求めて彷徨う蛍精や、音に寄せられて舞う羽根虫妖怪リーン族の数が倍増。樹木伐採時にも丁寧に巣穴を移築し、“ゆらぎ植生”と呼ばれる斑のある林床が生まれた。その結果、絶滅が危惧されたモリアオガエル霊の復活も確認されている。森林保全研究所の妖怪学者バノン・ヒサシ(173)は「死後の自然界も、人間社会と同じく保全と経済が両立できる。幽霊木工市はその好例」と分析する。

ただし、課題も残る。伝統を重んじる一部の古老霊や、都市部から越してきた新参死神グループからは「騒がしい音と新しい物作りは風情を壊す」と反発の声も上がる。しかしヤマビコ族の越智は「“もったいない”という感覚は世代や種族を超えて森と共にある。死後の世界であれ、生命の循環への敬意を忘れない」と意欲を語る。幽界の雑木林を舞台に繰り広げられる新たな里山保全のかたちに、今後も多くの異界住人たちが胸を躍らせている。

コメント

  1. さすがヤマビコ族さん、昔から声を大切にしてきた種族だけあって、木や森にも耳を傾けてるのが素敵です。幽霊木工市、一度遊びに行きたい!私も若い頃は雑木林でよく歌っていたので懐かしさでいっぱいになりました。

  2. 正直、空中で家具が組み上がるとか羨ましすぎる。地上の頃は苦労して木彫りしてたのに、死後はなんでもアリって感じですね…。でも資源の循環とか生態系も意識されてて、これは見習いたいです。他所でも導入できないかな。

  3. 昔この辺の雑木林で隠れんぼしてたのを思い出します。最近はだいぶ寂れてたから、蛍精やカエル霊が戻ってきたの本当にうれしいです。ただ、古老霊の気持ちも分かるなぁ…幽界にも静かさは必要だし。両方のバランスが取れるよう願ってます。

  4. 風流昆虫ホテル、SNSでも話題だったけど即完売で手に入らなかった!あの森の“ゆらぎ植生”の写真、本当に幻想的でした。死後の世界でも『もったいない』の精神が根付くなんて、これは異界的進歩だと思います。

  5. どっちにしても幽界もあの世も、生態系保存だの経済両立だの、結局この世の人間と似たようなことで賑わってるのが面白い。ま、死神組の反発も含めて全部が幽界の日常ってやつですね…次はモリアオガエル霊の野外ライブとか企画してほしい!