近年、死後の世界では高齢化が進み、認知症を患う住人たちへの医療・介護ニーズが急増している。そんな中、霊界の片田舎・蓬莱山妖怪村で始まった“遠隔透視診療”によるリモート看護が、患者や家族、妖怪医師会の間で議論を巻き起こしている。導入約半年、現場には複雑な思いが渦巻いている。
蓬莱山妖怪村では、医師不足がここ100年で深刻化し、特に認知症ケアを担う専門医の確保が難しくなっていた。そこで村役場は、村外から医師の霊魂を召喚し、時空通信結晶体を使った『遠隔透視診療システム』を今年初頭から導入。患者である年老いた河童や狸、鬼たちは、自室の水鏡に映る医師と毎日やりとりし、症状を報告する形となった。
だが、画面越しの診察では血の気の巡りや霊力の揺らぎ、霊体のシミ・ほこりの細かな変化など、“あの世的な症状”の把握がどうしても不十分との声が絶えない。河童の介護を担う古狸・木之下タヌ爺(217)は「機械越しだと、河童の甲羅に宿る水張り具合が伝わりにくい。医師自身の妖気も感じない」と不安を訴える。一方で、遠方の有名医師との繋がりができた喜びを語る者もおり、「これまで診てもらえなかった専門的な治療が受けられる」と感動の声も上がった。
妖怪村リモート診療センターの統括医・天狗橋ラウレンツィウスは「認知症患者に必要なのは、霊体だけでなく“心の影”への寄り添い。リモートでは限界もあるが、不足する専門医資源を補い、亡霊族や妖怪たちにも新しいケア体験を提供できる」と推進に自信。SNS上では『#水鏡看護は愛か無機物か』のハッシュタグが拡散し、「家族の団結力が弱まる」「ケアの担い手が画面の向こうへ消える」との声も見られ、世論は半々に割れている。
霊的医療の研究家で山姥大学准教授の紫式部キュリーは「リモート看護の急速な導入には今後、霊的共感力や異界流コミュニケーションの新基準策定が求められる。一方、肉体を持たない存在のケアは本質的に“距離”への再定義が必要」と指摘。村役場は今後、実際の医師や看護師と霊界AI補助霊を組み合わせた『半リアル往診』の実験導入も検討している。死後の社会における医療と介護の進化は、なお一筋縄ではいかないようだ。


コメント
わしらの時代には、医者といえば川沿いの庵で直接診てもらったもんじゃが…。今は水鏡越しとは、時代も変わったのお。便利なようで、寂しさも感じてしまう。
えっ、霊界にもAI補助霊が登場するなんてびっくりです!でも祖父(半透明)の介護で感じたけど、画面越しだとやっぱり心の温度が伝わらないよね。進化も大切だけど、魂のふれあいは忘れたくないな。
正直水鏡診療にはまだ疑問が残る。うちの実家の鬼婆もリモートで受診したけど、妖気の流れを診断できないってボヤいてたっす。やっぱり直接会うのが一番だよ。
遠くの名医とつながれるのは素直にうらやましい!わたしも生前は往診待ちで何十年も待った覚えがあるから、こういう進歩は魂が救われる気持ちです。
半リアル往診、成仏するまでに一度は体験してみたいもんだ。医療の進歩に驚く反面、妖怪村の昔ながらの家族介護の絆も大切にしてほしいものじゃ。