近年、死後の世界でも生物多様性の危機が叫ばれ、異界の湿地帯では絶滅が危惧される生物たちの保全策が急務となっている。そんな中、絶滅したとされていた「幻のカワウソ職人団」が湿地生態系の回復に一役買っていることが、自然保護局の最新報告書で明らかになった。
薄翠町中央湿地群では、かねてより植生の衰退と野生動物の激減が深刻な社会問題となっていた。「草魂(そうこん)」と呼ばれる妖怪植物学者・棹戸緑(さおと みどり)(189歳)は、定点観測データをもとに環境の悪化を早くから訴えていたが、目に見えない「幻のカワウソ職人団」の復活はほとんど都市伝説とされ、長らく本格的な議論の対象にはならなかった。
しかし、昨月24日深夜、湿地の定点カメラに写った無数の微光と不可思議な痕跡が議論を一変させた。自然保護局によれば、現場にはやわらかい光の毛皮と細工道具を持つカワウソ型幽魂が整然と水辺の枝や泥を編み、徹夜で複雑なビオトープ構造物を築きあげていた。「彼らが作り出したのは、水の流れを制御する天然ダムと、従来にはなかった葉の壁。これが流域の微生物バランスと再生可能資源サイクルを復活させている」と、棹戸博士は語る。
この現象に呼応するように、『死後湿地市民科学ネット』の登録会員たち(主に幽霊や学び霊童、妖獣体験者など)が自主的な生物観察と水質検査に参加する新しい流れが始まった。特に小学生霊団「ミズドリボーイズ」(リーダー:狩山水臣(かりやま みなおみ)(享年12))は手作りの水生植物図鑑を片手に日々シダ類や幽玉草の回復ぶりを報告。SNSでは「カワウソ職人さんへの感謝メッセージリレー」「未来型SDGs幽界宣言」など市民科学を後押しする運動が拡大している。
一方、異界保全庁のアスラ骨音(ほねおと)課長(数百歳)は、「幽界の多様性の回復と維持には、天然資源の持続的な循環を生みだす創造的活動が不可欠。幻のカワウソ団の復活は、かつて“絶滅”の象徴だった存在が、むしろ新たな再生のシンボルへと転じた好例」と総括する。今後は湿地のみならず、死後世界全域で失われた生態系サービスの復活を見据えた市民参加型の保全ネットワーク拡充も検討されている。最後に、棹戸博士は「この世とあの世を問わず、失われた命が形を変えて次世代へ繋がる多様性の尊さを、カワウソ職人たちは静かに示してくれた」と語った。


コメント
まさか本当に幻のカワウソ職人団が戻ってきたとは…!昔、幽界学校の遠足で湿地見学に行った時の寂しい風景を思い出してしんみりしちゃいました。これから少しずつ生きものが戻るのが楽しみです。