深夜、渡り橋のたもとにある「幽都スポーツパーク」には、物の怪から亡霊まで多彩な参加者たちが続々と集結した。今年で三回目となる死後界インクルーシブスポーツ祭「百鬼ボッチャカップ」は、障害の有無や種族、前世の経歴さえ問わず、あの世の住人が一堂に競い合う祭典だ。各種パラスポーツの中でも、転生者たちに人気急上昇中なのが「ボッチャ」。丸い霊体も、片足しかない山姥も、透明な下半身を持つ河童も、平等に楽しめるルールで異界の壁を超えた。
今年、注目されたのは「閻魔町フリースピリッツ」の大将・首無 幽一郎(しゅなし ゆういちろう・享年56)と、百面相の妖怪チーム「顔絵団」の対決だ。幽一郎は生前、足を動かせなかったが、死後はさらに頭も体も切り離れてしまった新たな障害を得た。それでも霊界専用の“浮遊型車椅子”と義手型エクトプラズマアームで精密なボール投げを実現し、観衆の喝采を浴びている。顔絵団の射手・皺井 千面(しわい せんめん・性別不詳)は1分ごとに顔と指の本数が変わる異能の持ち主。対戦直前も「今は指が三本なのでガイド霊と連携します」と冗談めかした。
今年の大会では、SNSでチームメイト募集中の「半透明コネクターズ」も初出場を果たした。幽霊初心者の佐渡島 玲奈(さどがしま れいな・新人霊)は、死後すぐはルールも分からなかったが、現世から届くパラスポーツ教材(届け主不明)を基にわずか三週間で指導霊資格まで取得。「みんな、身体の形も人生も違うのに、本気で応援し合える。死後も社会参加ってこういうことだと知った」と感想を述べた。
大会は公式審判として死神(役職:生活支援課職員)が参加し、ソーシャルディスタンス規定や“浮遊干渉”の反則など死後界独自のルールも随所に導入されている。特に好評だったのは、観客全員がエネルギー体で声援を送る「エクトプラズマウェーブ」応援タイム。バリアフリーを徹底した会場設計は、近年課題となっていた分裂霊や時空跳躍型妖怪への対応も進み、観戦者の約四割がパーソナルアシスタント霊を同伴できる仕組みも話題となった。
「百鬼ボッチャカップは、あの世でも多様性の花が咲く象徴だ」と語るのは実行委員代表の柳波 聖(やなぎなみ ひじり、現役妖精)。「誰もが主役になれる環境こそ“死後界版SDGs”の精神。現世と死後界、どちら側からも声援やノウハウが届いています」。SNSにも『自分も出てみたい!』『千面さんの変幻サービス最高!』など肯定的な声があふれた。次回大会では、車いすバスケット幽霊チームや多頭蛇の競技参加も予定されており、異界パラスポーツの発展からますます目が離せない。



コメント
死後でもこんなに熱くなれるイベントがあるなんて!一度でいいからエクトプラズマウェーブで本気応援してみたいです。玲奈さんみたいに転生間もなくても参加できるのが、あの世らしくて素敵。
閻魔町フリースピリッツ推しなので、首無大将の投球フォームには震えました!生前でさえ大変だったはずなのに、首と体が分かれてもあれだけやれるのは、まさに幽界スポ魂。来年も全力応援します。
時空跳躍型の妖怪まで考慮してバリアフリー進めるなんて、運営本当にお疲れさま…。異界でもこうやってみんなの『障り』を越えて寄り添う場が生まれるの、ちょっと成仏しそうな気持ちになります。
正直、死神が審判って聞いて緊張したのは僕だけですか…?でも、現世のパラスポーツともつながってる流れが生まれるのは、死後社会の未来を感じました。自分も浮遊型車椅子、試してみたい!
千面さんの一分ごと顔変わるパフォーマンス、あれはちょっと懐かしいあの世の笑いでした。生きてた頃も不自由はいろいろあったけど、死後界のほうが多様性を柔軟に受け止めてて羨ましいです。