幻の列車が導く冥界一人旅ブーム―温泉街から御朱印集めまで体験続々

深夜の薄暗い駅に黒い列車が到着し、透明な幽霊や妖怪の姿がホームで待つ様子。
冥界中央駅に到着する幽幻特急・ひとり旅号を待つ旅人たち。

深夜0時をまわると、冥界中央駅に静かに滑り込む黒鉄の車両――通称「幽幻特急・ひとり旅号」。この列車に乗り、今、死後の世界で一人旅を楽しむ幽霊や妖怪たちが急増している。温泉街の食べ歩きから御朱印集めまで、現世さながらの“マイクロツーリズム”が冥界の名所を賑わせているという。

今春、幽幻特急の運行5周年を記念して、『ひとり旅応援きっぷ』が発行された。これまで家族や仲間連れが中心だった死者の観光列車に、幽霊OLの松波あかね(享年28)がひとりで乗り込んだのは記憶に新しい。彼女はエクトプラス食堂車で“あの世の揚げだし雲海豆腐”を堪能、レトロな温泉街・玉響町では大人気の黒湯への入浴も果たした。「現世での忙しさから一転、誰にも干渉されずにマイペースで旅できる気楽さは格別です」と語る松波のSNSには、多くの亡者から体験談や応援コメントが寄せられている。

また、最近では“御朱印巡り”を楽しむ妖怪層も拡大中だ。特に百鬼清水護国社の御朱印帳は週末には配布待ちの行列ができるほどの盛況ぶり。空中に浮かぶスタンプや、蛍光色の墨汁で書かれた御朱印が人気で、幽霊書道家の楚原具現(享年63)は「生前に叶わなかった旅の夢を、冥界で好きなだけ実現してほしい」と話す。御朱印スポットでは食べ歩きグルメも豊富で、骨せんべい屋台や幻影茶房の三途川だんごがSNS映えすると若い亡者の間で話題だ。

一方で、乗り物そのものを楽しむ旅人も目立つようになった。近隣の亡者温泉街と魔界遊園地を結ぶ“透明バス”は、車体が完全に透明な上、時折車窓からあの世の名だたる妖怪たちが手を振るサービスも。死者向けガイド・波留副局長(死神協会勤務)は「幽幻特急や透明バスの乗車レポートを発信するインフルエンサーの活動も、冥界の観光産業を大きく後押ししている」と分析する。

「この世にもあの世にも、日常から離れた小さな冒険の楽しさは共通しています」と語るのは、旅文化評論家・亜久里音璃(幽霊評論家・享年41)。死後の世界のご当地グルメや“ひとり温泉”、気まぐれな乗り物体験が、一人旅文化をさらに豊かにしていると言えそうだ。異界の観光地には、今後も個性的な旅人たちの足跡が刻まれていくだろう。

コメント

  1. 幽幻特急、わしの時代にはまだ走ってなかったんじゃが、噂には聞いておった。今や一人旅が流行るとは、冥界もずいぶん様変わりしたもんじゃのう。玉響町の黒湯、懐かしい…もう一度浸かりたいわい。

  2. 透明バス、絶対インスタ映えでしょ!この前、三途川だんご食べながら御朱印巡りしてきましたが、幽界グルメの進化には驚きました。あの世でも旅って最高ですね。まだ成仏できそうにありません(笑)

  3. 御朱印集めって現世の流行がこんな形で冥界にも広がるなんて…。生前は忙しくて旅なんてできなかったけど、死後にこうして自由に動けるのはちょっと救われます。

  4. また新しい観光サービスか。死者も現世みたいに消費活動に取り込まれて、どこか落ち着かなく感じる時もあるな。まぁ、淋しさ紛らわせるには良いのかもしれんが。

  5. 幽霊OLのあかねさんの記事、読んでちょっと涙が出ました。生前できなかった一人旅を、冥界で思い切り楽しんでるって素敵です。自分も次の転生前に幽幻特急乗って、温泉巡りしてみたいなぁ。