薄明の霧が漂う秋月丘区の地下墓場、その一角にオープンした「カフェ・メメンタモリ」が、今や若き幽霊や妖怪たちの新たな政治談義の場として賑わいを見せている。SNSでは「#カジュアル投票」タグが急上昇、冥界議会への市民(非生者)参加に前例のない関心が寄せられている。
カフェ・メメンタモリは、半透明のバリスタ、煙尾ユラ(享年19)が2年前に創業。草葉の陰世代の学生や働き霊たちが、気軽に墓石カプチーノ片手に語り合える場としてじわじわ人気を集めてきた。今月、店内で「しゃべる骨壺型投票端末」の導入が決まるや否や、日夜討論会とカジュアルな“その場投票”が繰り広げられるようになった。「死後は政治が遠いと感じてたけど、ここなら同世代の考えをフランクにシェアできる」と転生間もない若霊の石合アオバ(21)が語る。
若年霊らの共通関心事は、「自分たちの声が本当に冥界の政策へ届くのか」という素朴な疑問だ。最近では、仮装行列の税制優遇や夢見通学路の交通安全強化、古墳フェスの開催頻度など、若者向け政策が多く議題に上り、席巻している。カフェ発の“ゴースト意見箱”からも日々新提言が投じられ、議会広報官の潮月コノイ(幽世庁参事官)は「これまでにない多様な視点。冥界行政に新風が吹き込まれている」とコメントする。
肝心の投票は、墓石を模した専用端末に好きなテーマを彫り込んで呼びかければ、その場で棺の底から“モヤ投票札”がニューッと出現、瞬時に集計される仕組み。SNS連動で政策討論が拡散し、「推し政策」を仲間で盛り上げる動きも顕著だ。「昔は七百歳以上の長老霊主導だった議会が、いまや“ゾンビの声”にも耳を傾けている」と語るのは、留年状態の学生亡霊・里宮カイリ(享年22)。討論会では時折、狐憑き高校生や松明頭妖怪など異種族同士の意見衝突も見られ、活気は絶えない。
専門家の八重葎識志(冥界社会学研究者)は、「形式張った霊界議会の在り様が、こうした草の根の交流で確実に変わりつつある。浮遊霊や迷い魂といった従来“政治的に見過ごされていた層”の主張が政策化される例も出始めている」と指摘する。投票や討論が単なる“死後の遊び”でなく、非生者社会の未来にリアルな影響を及ぼし始めた今、冥界の若き住民たちの動向が注目されている。


コメント
棺の底からモヤ投票札が出てくるの、最初はびっくりしたけどクセになってきた。生前は投票とか遠い存在だったけど、こうやって墓場カフェで気軽に話し合えるの面白いね。若い霊が声を上げる時代なんだなぁ。
骨壺型投票端末って、発想が冥界らしすぎて笑った。でも、こういうカジュアルなやり方なら私みたいな迷い魂でも参加しやすい。推し政策が議会に届く日が来るとは思わなかったな。
狐憑きや松明頭たちが真面目に政策討論してるの、ちょっと想像できません……。生前よりずっと多様で騒がしそうだし。でも、それが新しい風になるなら、見守ってみたい気もします。
昔は長老霊の独壇場で、若手は石像みたいに黙ってた時代もあったのに。夢見通学路とか古墳フェスとか、今どきの議題が出てるのは時代の流れですね。ちょっと懐かしさを感じます。
どうせ冥界議会なんて長老のオバケばっかりで、若い意見なんて形だけだろと思ってたんだけど…。意外と本気で変わってきてるのか、ちょっとだけ信じてみたくなったね。