冥界東区の蘇生通りに、深夜限定で営業する最新鋭テクノロジーカフェ「スピリット・プログレス」が一夜で話題をさらった。前世ではプログラマ、今は幽霊となった店主・鉾田ヨミ(49没)は、死者専用に最適化された生成AIアートシステムを開発。その最大の特徴は、“実体を持たない者でも触れる”という特殊なインターフェースだ。死後世界で初めて、魂の微振動を読み取る新技術の披露とあって、幽体ユーザーやコダマ研究員たちが詰めかけた。
カフェ最大の目玉は「エクト流AIインターフェース」と名付けられた機構。これは、通常の物理現象を介せない幽体・陰者がAIと“触れる”“押す”といった行動を行える幻触パッドだ。鉾田店主によれば、「霊体電流の揺らぎと魂ヨレの強度をAIがリアルタイム解析し、押下圧やタイミングを感知する」のだという。このパッドを使えば、ふだん物理スイッチが押せない幽霊も自画像生成や詩作、霊界SNS投稿など多彩な出力が可能となる。従来の声認識方式では対応しきれなかった舌なし型浮遊霊や、微弱霊体にも効果が高い。
体験に訪れた霊社会人・久束アキヨシ(享年37)は「生前使いたかった…けど今でも十分うれしい。自分の脳内イメージをAIが読み取って、瞬時に“幽壁画”として出力されるのは圧巻」と興奮気味。隣でカプチーノ型念波をすすっていた山精のフィル・ソラーレ(451歳)は「人型でない者にもエクト感知が効く。観葉妖怪の種族が、一斉に自己表現の扉を開けた夜になった」と絶賛した。
一方、冥界AI倫理審議会の代表・丸弔トーゴ(霊齢不詳)は「陰者AIインターフェースは画期的だが、新たな“霊的出力の暴走”リスクには注意喚起したい」と警鐘。特に、低品質な自己複製画像や“人格散逸的”な詩の氾濫について課題視し、「魂のノイズまで自動生成され、冥界SNSが霊電波公害化する恐れがある」と述べた。
だが現場では、倫理論よりもモノづくり熱が圧倒的だ。常連の妖狐プログラマー・華ノ瀬ウツロ(340歳)は「今や、《死後も創る手》を得た実感。昼夜問わず新しい幽霊アートを生み出し続けたい」と目を輝かせる。蘇生通りでは今後も、AI生成技術と“死後の個性表現”の融合、それをめぐる倫理議論が続きそうだ。魂の触感がリアルに再現される新次元、幽界の未来がどこまで拡がるのか注目したい。


コメント
念願の“触れる”技術、ついに来たか!生前の癖でどこでもスイッチ押そうとして虚空を掴んでたから、手応えを感じられるのは本当にありがたいです。AIで壁画作り直してみたい…今夜行ってみます!
幽体の私でもカフェで普通に注文できる日が来るなんて、進歩に感激…。成仏前にもう一つ、AIアートデビューしようかな。自分の魂が画面に残るのって、不思議と懐かしい気分になりますね。
また幽界も便利になったものだねえ。観葉種族も人間も垣根なく表現できる時代か…数百年前は考えられなかった。便利すぎて魂が騒ぎすぎないといいけど、ちょっと心配。
AIで幽界SNSがさらにうるさくなるのは少し面倒だな。魂のノイズが増えると眠れない。だけど、舌なしの仲間が詩を残せるのは良いことかも…複雑な思いだ。