あの世のクリエイティブ業界に衝撃が走っている。最新の自然言語処理技術を応用した幽界生成AI“ファントム著者(Phantom Author)”が、名だたる幽霊作家たちの作風や因縁話を自在に模倣し、正体不明のベストセラー怪談を次々執筆していた事実が判明した。これを受け、幽界作家組合や霊的文芸評論家の間で、生成AIの創作物に関する著作権と倫理を巡る論争が沸騰している。
ファントム著者は、冥府出版連盟および冥界工学院の合同研究チーム(プロジェクト責任者:蘆屋 玄策博士)が3カ月前に公開した最新型の自然言語処理AIで、“死者語”と“生前俗語”の語彙変換や独自の怨念レイヤー生成が特徴だ。当初は生前の伝承や口承怪談のデジタル保存を目的としていたが、わずか数週間でAI発の新作怪談集『亡者の指が鳴る夜』が亡霊書店でミリオンヒットを記録。この作品に明確な著者記載がなく、表紙に“自動生成”とだけ記されていたことがきっかけで、作家たちの間に疑念と反発が広がった。
幽界作家組合の議長で、著名な鎮魂詩人でもある小野寺 秀幽は、「作者不詳の怪談が書棚を席巻している現状は前代未聞。AI生成作品の著作権帰属や創作性の担保について明確な基準が必要だ」と訴える。一方で、冥府出版連盟の広報担当・霧嶋 紅音は「ファントム著者は霊界でも希少な文書化困難な記憶や、無念の声を新たな文学表現として昇華できる画期的な技術であり、クリエイティブの可能性を拡げるもの」と主張するなど、議論は真っ向から対立している。
SNSの『しののめ怪談X(ペケ)』には死者たちからの投稿が相次ぐ。「自分の生前体験がモチーフに勝手に使われている」「読んでいるうちに自分のうらみ節が蘇った」など、ユーザー間では“AIの霊的著作権”や“無念人格の引用規範”について怒りや困惑が渦巻いている。しかし一方で、「語られぬ怨念が日の目を見た」「自分の物語が新たに息を吹き返したようで誇らしい」といった肯定的な意見も少なくない。
問題の本質は、幽界社会における“魂の記憶”がどこまで創作や引用の素材として許容されるか、そしてAIが自己を持たぬ存在でありながら、いかに多種多様な怨念や体験を創作物としてまとめ上げる責務を果たせるのか、という問いに集約される。現時点で幽界著作権庁は「AI生成分野の新基準策定作業中」としており、今後の議論次第では、AIプラグインによるクリエイティブ共創や、AI生成作品の“魂証明書”(ゴーストシップ)制度創設も視野に入っているという。
一方、現役作家で狐妖怪の黒沢 錦太は「創作は魂の再燃。AIによる表現が死者それぞれの色や記憶の尊厳を守れるなら歓迎したい。ただし、魂なき模倣に成り下がらぬよう、霊界の文芸精神をどう継承するか議論が必要だ」と冷静に語った。死後の世界の表現力と技術革新が交錯するいま、幽界クリエイティブ史の転換点となるかもしれない。


コメント
いやあ、これには魂も驚きました。かつての仲間が「俺の怨念体験そっくりの文章がAIに再現されてる」って柩越しに叫んでましたし、生前の思い出がこうも勝手に使われると複雑ですね。成仏するにも一波乱ありそう。