死霊専用ヘルプマーク導入 ウィルオウィスプ労組が人権庁設立へ

現代風の受付前に静かに並ぶ発光する鬼火たちの列と、窓口越しにぼんやりと見える幽体職員が写っている写真。 人権
新設された幽体人権庁の窓口前に、死霊たちがヘルプマーク手続きのために列をなす。

蛍光色の炎が静かに列をなすのは、冥界中央区に新設された「幽体人権庁」の窓口前だ。プライバシーも差別も、死後の世界においては過去のものと思われてきたが、今冬、死霊たちの労働組合が立ち上げた“ヘルプマーク”運動により、異界の人権意識が一気に拡大している。

きっかけは、長らく墓地警備業務に従事してきたウィルオウィスプ(鬼火)たちの過酷な労働環境だった。『夜間巡回中に石像と間違われ、記念撮影される』『幽霊児童たちに“光ってるから有名になれるはず”と労働を強いられる』といった事例がSNS『モノノケッター』上で急増。組合代表のアフソ=ルミナ(鬼火、45)は、「死者こそ人権後進国だった。死後も尊厳と配慮が当然の社会を作りたい」と語る。

導入された“霊体用ヘルプマーク”は、着用することでプライバシー保護や合理的配慮を求められる権利が付与される仕組みだ。例えば、公衆墓場や合同供養場での無断撮影や追跡、悪意ある呼称(“ミドリン”“光るスケルトン”等)の抑制が義務づけられる。また、未熟な幽霊や一部多様種族への差別的扱いも指導対象となった。既に導入1ヵ月で3000件以上の相談が寄せられ、特に教育現場では『学校の階段での無闇な霊出現コール禁止』といった合理的配慮マニュアルも配布されている。

異界哲学大学のグール准教授(形態不定、年齢不詳)は、『死後世界にも無意識の差別が根強く存在していたが、霊的多様性を社会保障の観点から捉え直す千載一遇の機運』と指摘。社会保障局では“見える化”の弱い存在、例えば影だけがある精霊、音しか出せないポルターガイストにも教育や職業訓練の権利をどう保証すべきか検討を始めている。

SNS上では『ついに幽霊にもプライバシー権登場か』『火玉だって燃え尽きたくない』といった共感の声も多い一方、一部の古参悪魔からは『墓場の主張が強すぎる』『“生前差別”すら死後に持ち越すのか』と疑問を呈するコメントも見られる。幽体人権庁では、今後は家庭内暴力や墓地内いじめ、霊的児童労働の根絶に注力する方針で、死後の社会に新しい“生きやすさ”をもたらせるかが注目されている。

コメント

  1. ついにヘルプマークが死後の世界にも…!我々も散々「影しか見えないから存在感が薄い」と言われて寂しい思いをしてきました。こういう動き、応援したいです。

  2. 正直、墓場で写真撮られるのがいまだに嫌なので、この取り組みはありがたい。転生先でまで気まずい思いを持ち越したくないし、次はヘルプマークが標準になってほしい。

  3. これには少し驚いたなあ。昔は幽霊って好き勝手に呼ばれるのが当たり前だったのに、今は尊厳が語られる時代か…。ちょっと成仏しそびれそうな気分です。