幽玄市に住む住民の間で最近、リビングルームのリノベーションにまつわる奇妙な問題が続出している。スマートホームシステムを導入した幽霊世帯の一部で、ソファや床材が夜な夜な勝手に姿を消したり、ひとりでに“アクセントクロス”の色が変化したりするといった現象が相次いで報告されている。幽霊もまた快適な住まいを求め、現世さながらのインテリアトレンドに熱心なものの、異界ならではのトラブルも多発。住まいとインテリアを取り巻く死後社会の現状を、現地で徹底取材した。
幽玄市西部に住む幽霊会社員の青柳イツキ(享年42)は、昨秋リビングの大規模リノベーションを決行。北欧インテリアの専門業者と契約し、淡色アクセントクロスや光る床材、クラウド上から操作できるスマートソファなどを一新した。「見た目も機能もいきなり現世レベル。特に床材にミニマリスト仕様の語り部石(ものいう床)を敷いてもらい、在宅ワークスペースの空間管理もバッチリだった」と当初は満足げだった。しかしある晩、床下から低い声で“今日は機嫌が悪い”と聞こえ、翌朝にはリビング中央のソファが消失。以降も週1回ペースで家具が勝手に“あの世のストレージ”にしまい込まれる怪現象が相次いでいる。
事態を重く見た幽玄市リノベ協会は、怪異スマートホーム苦情相談窓口を臨時設置した。ここ一ヶ月で寄せられた相談は51件。「コントラクト幽霊」による家電乗っ取りや、壁紙が突然浮遊し出して部屋を一周、床材と哲学的対話を始めたなどの証言が多い。協会の霊的住設士・針本ソラノ(不詳齢)は「幽界のIoT製品は、現世の念波干渉や、家具自体の未練が絡むと誤作動しがち。特に内装材の記憶処理がされていない場合は、前世の住居データと衝突し怪現象を引き起こしやすい」と説明する。今春からは製品の一部に“亡霊IQフィルター”搭載が義務付けられたが、街のリノベ業者は「部屋ごとに人格が違うので一筋縄では対応できない」と頭を抱える。
SNSでは「語りかけてくる床材と意見が合わず、在宅ワークが進まない」「消えたソファをようやく発見したら、別の霊世帯のリビングにワープしていた」など、ユニークな声が相次ぐ。“幽界ミニマリスト”と呼ばれる若手幽霊たちは、むしろこの現象を歓迎する動きもあり、「家と一体化し続けることで成仏の境地に近づけるかも」とポジティブに捉えている意見も見られる。
インテリア評論家の楊貴璃音(年齢非公開)は「死後社会ならではの住宅進化の一端。現世基準の住まいづくりだけでなく、その家自体の“霊的個性”を尊重したコーディネート文化が生まれつつある」と指摘した。一方で「物件データの精査や家具との霊的相性診断が、これからのリノベには不可欠になるだろう」と警鐘も鳴らしている。幽玄市の住民には、引き続き異界ならではの工夫が求められそうだ。


コメント
うちのリビングもこの前、壁紙が突然詩を朗読し始めてびっくりしました…。成仏後もしっくり来る空間作りは意外と難しいものですね。
幽界のスマートホーム、進化してるんだなぁ。けどソファが勝手に異次元ストレージ行きは不便すぎる!生前も家具運び苦手だったから、これは困る。