今年も異界の“四季走”が本格化した。あの世で有数の伝統行事、「春一番おふとん移動競争」が開幕し、“涼を求めて”走った心霊たちが、例年にない寒暖差からくる“幽体疲労”でふとんの山に埋もれているという。意外なところで気圧と感情の乱高下が問題となり、関係者は対策を急いでいる。
おふとん部長の菊房ねい(234歳)は、幾度の春秋を超えてきたものの「ここまで春一番が熱風になるとは思わなかった」と顔色ならぬ“羽色”を曇らせる。今年の死後界は、5月にして霊温が一気に猛暑日へと変化。冬眠明けの新入り幽霊たちを中心に、ふとんをかついで練り歩く伝統行事が“過酷化”しているという。大会翌日は、部員の3割が“気圧性うつ”で布団ごと沈黙したまま、町の広場で集団昼寝(昇華タイム)を敢行した。
異常気候の影響で、幽体内部の霊気循環が乱れやすくなっている、と説明するのは異界⑦保健局の峡間アイシャ医師(死神科・409歳)。「幽霊にも“寒暖差疲労”が認識されるようになったのはこの百年ほどです。急な気温の上下や季節ごとの気圧波は、単に透明度を下げるだけでなく、モチベーションにも暗い影を落とします。とくに社会人幽霊や浮遊系の妖怪にとって、春から夏への変わり目は見えざるストレスフルな時期です」淡々と語るものの、実際に診療所でも“季節運搬ストレス”の相談が急増しているという。
SNS上では、“ふとん部の幽体離脱スプリント”動画に約10万通霊(とうれい)のリアクションが集まった。『一晩中ため息で浮力を稼ぐ日が来るとは』や『気圧の波がくるたび布団が飛んでいくの、もうやめて』といった、あの世らしい嘆きや励ましが多数寄せられている。中には『新作クール枕カバー(冷却お札付き)開発はよ』『幽界ビタミンCって本当に効く?』といった、対策グッズの議論も加熱。企業霊たちも市場に乗り遅れまいと、各種“涼具”開発に余念がない。
おふとん部の今後だが、菊房部長は「根本的には、環境そのものの“再構築”が必要かもしれない。幽霊もいつまでも布団に閉じこもっていられない」と新たな適応策に意欲を見せる。今年は“朝顔化した布団”や“自力で飛ぶ夏掛け”といったユニークな発明も話題を呼び、異界の気候適応レースは、さらなる進化を遂げようとしている。これから迎える本格的なあの世の夏、幽体も心も冷やしすぎにはご注意を。



コメント
ああ、もうそんな季節かぁ。生前より、死後のほうが布団運びに苦労してる気がします(笑)。春一番でふっとぶ度に、昔のふかふかおふとんを思い出してちょっと切なくなったり。無理せず、みなさん昇華タイムは大事にしてくださいね。
朝顔化した布団とか、自力で飛ぶ夏掛けとか…発明のスピードが速すぎてついていけません!気圧性うつの話、社会人幽霊には他人事じゃないです。異界にも働き方改革が必要だと思う。
SNSでスプリント動画バズってましたね。私も一晩中ため息で浮力稼いで疲弊しました。気温も気圧も不安定すぎて、見えざるストレスがどんどん溜まる…。そろそろ「幽界ビタミンC」に手を出そうか悩み中。
新入り幽霊の皆さん、これが異界の“春”です。馴染めるまで大変だけど、その分ふとん移動の後の集団昼寝は最高ですよ。昇華タイム、毎年楽しみにしてます。皆のふとん選びの個性も面白い!
それにしても、寒暖差で幽体までぐったりするなんて、あの世も生ぬるくなったもんだ。昔の霊は、無理して霊圧で押しきってた記憶があるけど(笑)。まぁ快適グッズが流行るのは悪くないか。来世は冷却お札付きでお願いします。