死後の世界・淡冥県に広がる里山“影落山地”で、土壌崩壊と外来種クモの増加が深刻な問題となっていたが、今月より幽霊カブトムシ部隊による大規模な生態系リワークが本格化し、現地の精霊や村人から歓声が上がっている。死者の間でも“森の未来は自分たちで守る”意識が急速に高まる中、自然共生の新たなモデルとして注目を集めている。
昨年秋、影落山地では異界輸送船の誤着陸により、暴風耐性を持つ外来種“大万毒クモ”が土壌に繁殖。表層の細菌やきのこたちが駆逐され、養分循環が途絶してしまった。村役場土壌課の専門幽霊・潮路香葉(ちょうじ・かよう/享年67)は「元は豊かな『夜露黒土』だったが、クモの毒で地中微生物がほぼ全滅した。水脈も絶たれ、精霊たちも姿を消している」と深刻な状況を語る。
再生事業では、幽霊カブトムシ部隊『百舞黒甲団(ひゃくぶくろこうだん)』が中心となる。生前は土壌整備員だった隊長、昆布森冥二郎(こんぶもり・めいじろう/推定享年45)は、「幽霊カブトムシなら毒も気にせず地中に潜入できる。再生水を地表から注入しつつ、新旧の土を練り合わせ、根こそぎ養分流出を防ぐ作業を丸ごと引き受けている」と誇りをのぞかせる。一部では死神キャリア支援課もボランティア魂で応援し、昨夜は“冥界土壌サンバ”と称するダンス大会で作業員の士気を高めた。
SNS上では、地域の妖怪たちから「カブトムシ部隊の耕しが進むにつれて夜霧の香りが戻ってきた」「魂根草(たまねぐさ)の発芽率が一週間で3割増加」といった声が相次ぐ。現地視察に訪れた里山研究家・煤谷太蔵(すすたに・たいぞう/52、幽霊)は「地中を音波探査した結果、幽霊カブトムシの移動ルートに沿って再生微生物が生まれている。今後は在来のモノノケタケ群生地も復活が期待される」と解説。生態系サービスの回復を全ヒト型死者で分け合う方針が検討されている。
国土冥府省は今後、外来種対策として“文明疲労性スミ穴”の補修も支援。「冥界で育つ原生生物たちは、生前世界との境い目をやわらげてくれる。カブトムシ部隊の里山再生モデルが異界全体に波及し、気候変動への耐性強化につなげたい」(同省自然再生課・墓守紬課長/享年不詳)と話す。死後の世界で交錯する命の営みは、今、新たな共生の形を模索している。



コメント
カブトムシ部隊がまた活躍しているとは驚きですね。自分が成仏する前、影落山地は本当に静かで好きでした。夜霧の香りが戻ったと聞いてなんだか懐かしいです。これからの再生、応援しています。
湿っぽい冥界で土の活動なんて地味だと思ってたけど、カブトムシたちの働きにはちょっと感動です。ただ、外来クモの対策は一時しのぎにならないように、もっと抜本的にやってほしいなとも思います。
土壌再生工事、ご苦労様です。生前は山を歩いてたけど、あの世でも自然を守る姿勢が受け継がれてるのが温かいですね。冥界土壌サンバ、ちょっと参加してみたかった(笑)
魂根草の発芽が増えてるって本当ですか!?私の墓周りも最近、草花が元気になってきた気がして不思議でした。もしかして裏でカブトムシ部隊が動いていたのかも。ありがたいですね。
どうせまた死人手当の予算消化だろって冷めて見てたけど、夜露黒土が甦れば、精霊祭りの踊り場も戻るかもな。どうせ消える命、少しはよい風が吹いてほしいところだ。