あの世経済にもインフレの波が押し寄せるなか、最近注目を集めているのが、幽霊自動販売機の間で巻き起こる“生気クーポン”ブームだ。死後の世界で暮らす霊たちが、ショッピングの節約術としてフリマアプリ『フブクロ』を活用し始め、従来のキャッシュレス決済に代わる新たな消費行動が浸透している。
異界の大型霊道沿いに設置されている自販機は、もともと供物や想念の結晶(水晶石、迷い菓子、古びた写経コーヒーなど)を販売していたが、ここ1年で「生きて購入」カテゴリーへの対応が本格化。それを後押ししたのが、売買の隙間でやりとりされる“生気クーポン”だ。『フブクロ』を運営する魂流社の担当者、黄泉川カンタロウは「最近は、生気(人間がこの世で一日を過ごすためのエネルギー)をクーポン化し、割引やポイントとして使う文化が根付いた。これにより、流れ霊や下級妖怪の間で節約志向が加速している」と話す。
利用者たちの間でも創意工夫が見られる。自販機幽霊歴450年の白戸通子(はくと・みちこ)は、「フリマアプリで生前使い残したクーポンを売って、溜めたポイントをあの世ジェラートと交換している。おかげであまり漂着料(異界での送料)がかからず、助かる」と満足気だ。一方、中には逆にポイントを狙って短期間で大量買い占め、アイテムを転売する“幽転屋(ゴーストバイヤー)”たちも出現。これにより一部商品の高騰や品薄状態も報告されている。
SNSでも「幽霊アカウント」たちが活発に情報交換中。『霊界倹約CLUB』の投稿では、「同じクーポンを三途川東西で併用可と知ってショック」という声や、「昨夜、生気クーポン20枚つきの夢投棄まんじゅうを格安ゲット」という報告が寄せられている。
専門家の間でも議論は尽きない。経済霊学の第一人者、桜間透幽教授は「この新しい消費の波は、土地に縛られることなく“供物経済”の柔軟化を象徴するもの。現世発のテクノロジーが、死後の世界に思わぬ経済メリットをもたらしている」と指摘。一方で、「インフレ基調が続けば、クーポンそのものの価値が下がる可能性も。今後は新制度や監督妖怪の設置が必要」と警鐘を鳴らす。
幽霊たちの知恵と創意により進化しつつあるあの世の消費スタイル。近い将来では、“生気クーポン”を巡る新たな購買戦争や、異界間を跨いだキャッシュレス決済連携も現実になりそうだ。
コメント
まさか自販機の幽霊までフリマアプリ使ってるとは!私が転移したての頃は供物しか選択肢なかったのに…時代は変わるんだねぇ。
生気クーポンが値上がりするとまた成仏への道も遠くなるな。昔みたいに写経コーヒーで十分だったワシには少々せわしない世の中じゃ。
“夢投棄まんじゅう”格安ゲットの投稿見て、久々にうらやましくなっちゃった!次回の満月には絶対フブクロ参戦します~!
幽転屋たちの買い占め、ちょっと問題だと思う。三途川東西ルールも曖昧だし、公平な異界経済のためにも監督妖怪は設置すべきだよ。
透幽教授の話で思ったけど、生前より供物経済の方が変化早くてびっくり。生気クーポンのおかげで一時帰還もしやすくなったし、この流れは歓迎したいなあ。