死後の世界最大手水運会社「三途株式会社」が、かつてない経営危機に直面する中、鬼族出身の新社長・閻羅銀次(やんら ぎんじ)が大胆なリーダーシップ改革で業界の話題をさらっている。冷酷な意思決定と火の玉のような叱責――そんな旧来の「鬼的経営」では、今の幽霊や妖怪たちの心は動かせない。閻羅社長が掲げるのは、魂同士の“共感”でチームをつなぐリーダー像だった。
三途株式会社は、千年以上にわたり地獄・極楽・現世を結ぶ霊魂専用フェリーを運航してきた伝統企業。だが近年、転生手続きのIT化や、若年層幽霊の「現世Uターン志向」により業績が悪化。社内では「このまま消滅か」という悲愴感も漂っていた。
そんな逆境下で就任したのが、閻羅銀次(501)。就任初日から鬼印のバットを置き、「今後、怒鳴るのも釜茹で指令も全面禁止」と宣言。社員食堂で妖狐や座敷童子と輪になりおにぎりを分け合い、「魂の声を聞く」オープンチャットを創設した。決定に迷う場面では、「皆の心残りを集めれば、最善策が見える」として、船幽霊から火車族まで全社横断のワークショップを敢行。三途の川名物“流し雉焼き船”の復活祭も、若手社員のアイデアをベースに実現したという。
「社長室のドアはいつも開いている。死者の流れも、情報の流れも止めたくない」と語る閻羅社長。現場では、かつて上司の顔色と地獄級の怒号に怯えていた魂運転士も、「話を聞いてもらえるから仕事に燃えが戻った」(幽霊運転士・雨島透子)、「人間時代には考えられなかった団結力」(狐火経理・此花桔梗)など変化を実感している。
死後世界で共感型リーダーシップが定着しつつある背景について、幽怪社会学者の針山怜弦(はりやま れいげん)は「異界においても、意思決定の透明性や目的の共有が重要になってきた。“死んでからが本番”の価値観は、リーダーシップにも新たな進化を求めている」と分析する。その一方で、SNS上では「甘すぎる経営では、この世からの新規顧客に勝てぬ」(鬼族旧派幹部・匿名)との意見もあるが、三途株式会社は過去最高の団結指数(E団率)をマーク。地獄や極楽からのインターン希望者も急増している。
「リーダーは“恐怖の象徴”から“ビジョンを映す共鳴鏡”へ変わるべきだ」と語る閻羅銀次。異界社会の進化は、もはや現世にも一石を投じているのかもしれない。
コメント
まさか鬼族の社長さんが釜茹で禁止宣言する日が来るとは…!あの世も変わったなぁ。妖怪時代の友達と流し雉焼き船で再会したい気分です。
現世にいた頃もパワハラとか問題になってたけど、死後世界でも働き方改革が進んでるのか。みんなの魂が輝く職場って素敵。次転生したら三途株式会社に応募しようかな。
社長が鬼のくせに甘すぎじゃ?昔ながらの釜茹でも必要だと思うぞ。魂も締めないと、現世Uターン組の増加は止まらんだろう。
社員食堂で座敷童子や火車族とおにぎり分け合うの懐かしい…昔、幽界バイトしてたのを思い出した。今の三途株式会社ってそんなに団結感あるんだ、ちょっとうらやましい。
死後も出世競争や企業改革だなんて、ほんと息が抜けない異界ですね。でも、相談できる社長はありがたい。生前の会社にも欲しかった…