レトロブームが死後の世界にも到来している。五山の送り火が霞む頃、京都では幽霊や妖怪たちの間で昭和風情溢れる旅館や屋台を巡る旅が人気を博している。現世の人々には決して見えない、あの世ならではの名所と地元グルメ、そして幽界限定のインスタ映えスポットまで、今年注目の『幽世京都』最新旅行ガイドをお届けする。
今年春、『幻燈旅館 菊一』が幽霊街の中心地にリニューアルオープンしたことが話題の火付け役となった。旅館の女将、暮木みさえによれば「昭和初期の意匠を再現し、廊下は畳敷き、窓には曇りガラス。部屋ごとに異なる怪談話の走馬灯が流れます」と語る。深夜3時になると、中庭にぽっと灯る狐火を模したランタンが浮かび上がり、写真を撮ると淡い紫の光跡が現れることから、SNS『幽界インスタ』では「#幽レトロナイト」がトレンド入りしている。
屋台グルメにも注目だ。ソウルフードとして名高い『煙幕だんご』は、オバケ屋台職人・翳野あやめが毎夜手作り。食べるとだんごの串が一瞬姿を消し、握った手にだけほんのり温もりが残るとの噂だ。他にも『いなり天幻うどん』や『浮遊大福』といったこの世では味わえない料理が並ぶ。旅行ブロガー霧山明(195歳)は「懐かしさと新奇さの共演。人間だった頃の記憶に柔らかく響く味」と語る。
絶景スポットとしては『千宿の坂』が外せない。明治時代の町並みを再現しつつ、夜になると階段に提灯の幻影が次々と現れ、歩くたびに足元の影が桜色へと彩られる。季節のイベント『幽燈祭』では、踊り好きの座敷童たちが仄青い着物で夜道を練り歩き、訪れた旅行者の亡霊たちは自撮り用の霊カメラを片手に撮影大会。オシャレな狐娘の間で「#坂道映え」が競われている。
旅行専門家の納戸さだ男(322歳)は「京都は長き死後人生に新たな発見を与えてくれる聖地。観光の際は現世の人間とすれ違わないよう、日没後の移動がベスト」とアドバイスする。
最後に、地元学生グループ『無窮の会』のリーダー、淡海澪(21・大学幽霊)は「レトロ旅館の囲炉裏部屋で青春を語り合うのが流行。現世から来たばかりの新米幽霊にもやさしいガイドマップが配布され始めている」と胸を張った。
日本の異界文化と現代レトロの融合が、幽世の京都観光にかつてない活気を与えている。週末はぜひ、あの世の昭和ロマンを堪能しに旅立ってみてはいかがだろう。
コメント
あの世に来てもう百年なのに、また京都に新しい流行が生まれるなんて驚きです!幻燈旅館の狐火ランタン、昔の祭りの日を思い出してしんみり。幽界インスタに早速投稿しちゃおうかな。
千宿の坂、私たち妖怪学生の間でもめっちゃ話題ですよ!あの桜色の影、現世にはなかった美しさで感激です。坂道映え選手権、今年もエントリーします!
煙幕だんご…食べに行きたいけど串が消えるのは未だに不思議でドキドキしてしまいます。人間だった頃は団子なんて普通だったのに、幽界流になるとこんなに幻想的!職人さんに会ってみたいな。
幽世の京都、相変わらずイベント盛りだくさん。あの世の昭和ロマンって言われると少し照れるけど、転生組には懐かしさ倍増かも。次はどんな屋台が出てくるか楽しみにしてます。
昔、成仏前に京都で迷子になった思い出が蘇りました。今度は幽界で迷子にならないよう、新米幽霊向けのガイドマップができたのは嬉しいです!無窮の会の皆さん、応援してます。