異界で「外国人妖怪」採用急増 幽霊企業の人材難と多様化の波

薄暗いオフィスラウンジで多国籍の幽霊や妖怪たちが共にくつろいでいる様子の写真。 雇用
異国の幽霊や妖怪が集う幻想的な職場風景。

死後の世界の雇用市場に、新たな潮流が起きている。各地の幽霊企業や妖怪管理組合で“外国人妖怪”の採用が急増し、異界の労働環境にも多様性(ダイバーシティ)の波が押し寄せているのだ。人材不足に悩む企業と、移住を希望する異国の幽霊や妖怪たち。幻想社会の就職事情はいま、大きな転機を迎えている。

「人間界から流入する若手幽霊だけでは賄いきれません」。西日本のパラダイム街に本社を置く幽魂物流の人事部長、氷室迦楼羅(ひむろ・かるら/葵区・456歳)はこう話す。近年、地元出身の幽霊社員が転職や副業に流れる一方、アメリカや中国、南米の死後世界からやってくる“国際妖怪”の求人応募が激増。葵区では昨年、企業による妖怪ビザ発給数が前年比120%増を記録した。

それに伴い、職場環境の変化はすさまじい。旧来の日本式ホラー的働き方を重んじていた企業も、インド系幽霊の信仰による週休三霊制や、西欧の吸血鬼パートタイム希望など、多様な勤務形態に対応せざるを得ない状況だ。現地法人では、日本語とともにポルトガル語・ゴースト語・妖怪英語の社内公用化も進む。中には、交流スペースでくつろぐメデューサ社員と、茶柱妖怪による「異界共助カフェ」も人気となっている。

SNSでも話題になっている。「私の職場にこの春入ったベラルーシ産の‘亡霊ITエンジニア’は、バグ修正が一瞬。幽霊なのにDX推進に本気!」(ブラック雨宮・ライター)、「正直、古株の百物語系より、サイバー妖怪や黄泉の妖精の方が話が解りやすい」(小田原稲荷・事務(823))といった投稿が相次ぐ。一方で「異界ならではの暗黙知や念力的上下関係が薄れ、絶叫研修の意義が薄れるのでは」と懸念する声や、高齢妖怪の再雇用問題も噴出している。

専門家の見解も分かれる。霊的経済研究所の田嶋燦(たじま・さん/経済霊学者)は「異界市場もグローバル競争時代。外国人妖怪の能力は高く、職場活性化に不可欠だが、伝統文化保存も並行して進めるべき」と指摘。実際、妖怪人材派遣大手・鬼瓦ホールディングスでは、異界地域ごとに多文化共生のワークショップを義務化するなど、職場環境の最適化を一層急いでいる。

この全く新しい雇用・転職スタイルは、契約社員や副業志向の若手亡霊にも追い風となりそうだ。今後、異界相互の人材交流やフレックス霊体労働制が常識になる日も近いかもしれない。

コメント

  1. 異国の妖怪さんたちが隣の席で働く時代か…私が夜な夜な小屋で提灯をともしていた頃からは想像できない。時代は変わったなあ。

  2. 僕の幽魂物流にも最近ブラジルから来たカピラリア妖怪が入ってきたけど、あのノリに戸惑いっぱなし。けど仕事は霊速だし、意外と頼りになるよ!

  3. これで転職組が増えて幽界のブラック層が薄まればいいね。成仏未経験の若手亡霊にも光が当たる時代にしてほしい。

  4. なんだか現世のサラリーマンと同じような悩みが……。多文化共生は良いと思うけど、絶叫研修がなくなるのは少し寂しいよ。

  5. 多様な妖怪が集まる共助カフェ、前世から憧れてた光景だにゃ。次の転生ではぜひ国際色ある職場で働いてみたい!