あの世初のIoT網「幽界ネット」始動 妖怪界にウェアラブル旋風

夜の霧が立ちこめる妖怪商店街で、幽霊や妖怪たちが光るスマートデバイスを使い合う様子のリアルな写真風景。 IoT(モノのインターネット)
幽界ネットによりIoTデバイスが広まる妖怪社会の最前線。

死後の世界もついにスマート化の波に飲み込まれた。幽霊や妖怪たちが日常的に利用できるあの世初の大規模IoTネットワーク『幽界ネット』が、新たな生活インフラとして運用を開始した。開発を主導したのは機巧技術庁の主任技師、蟇目蝶子(ひきめ・ちょうこ/霧隠村出身、年齢不詳)。「怨念帯ですぐに干渉されるのでは」などの懸念もあったが、最新の位相ずれプロトコルにより、霊波ノイズの大幅除去に成功したという。

これまで妖怪社会のデータ連携は、口伝やテレパシーに大きく依存してきた。しかし、新IoT網では墓石型スマートハブや、煙管一体型ウェアラブル端末といった独自デバイスが多数登場。雨夜が続く河童集落では、尾の濡れ感知センサー付き“お皿ウェアラブル”が人気だという。小豆洗い業組合では、自動化された妖気モニタリングロボの導入で、1晩あたり約3升の小豆節水に成功したという分析もあり、IoT化の恩恵は広がりつつある。

幽界ネットの基幹には、雲流クラウド(雲の上の記憶層)が採用され、個体ごとに蓄積した体験や変化を即時アップロード。さらにサプライチェーン管理にも利用が開始され、妖怪商店街のマシンラーニング型仕入れ予測システムが、幽気の流れや客足を分析して、夜毎最適な品揃えを実現している。「百鬼市の烏天狗ストアが、IoT自動決済に対応したのは画期的」と幽界経済評論家の鵺井道彦(ぬえい・みちひこ/幽界経済研究所)は評価する。

一方、急速なデジタル化によるセキュリティ課題も指摘されている。特に「地縛霊型ウイルス」の大量拡散や、背後霊のなりすましによる認証トラブルが報告されたことから、幽界庁は生前同意書ベースのパスワード管理や、念写型多要素認証の導入を推進。「怪談会の情報共有が簡単になる一方、ヒトダマの個人情報流出が危惧される」「うっかり霊気制御を間違えてポルターガイスト化するのでは」と、SNS『冥界チャット』でもさまざまな声が飛び交っている。

『幽界ネット』を通じて、死後の住人たちは現世顔負けのIoT生活に順応しつつある。カッパノ清志(沼守り協会/公益妖)のコメントによれば、「昔は石碑を流すしかなかったお尋ね者の情報が、今ではハッシュタグ付きで拡散できる時代。親指一本で葦をしゅるしゅる巻いていた時代が懐かしい」と、技術進化を懐かしむ声も。妖怪×テクノロジーが加速する幽界社会の今後からは、ますます目が離せない。

コメント

  1. まさか幽界にもIoTの波が来るなんて…!昔は霧の使いで情報回してたのに、今じゃ雲流クラウドとか、隔世の感だわ。けど小豆節水はちょっと羨ましい。

  2. 便利になるのは良いけど、背後霊なりすまし問題は本当に心配。昔みたいに口伝だけの怪談会も、やっぱり残してほしいなあ。

  3. 吾輩の時代には、情報と言えば石碑か、せいぜいヒトダマ伝言だったぞ。今の若い妖怪たちには、転生して追いつかんといかんかもな。

  4. お皿ウェアラブルとか、本当に便利そう。河童の子たちがはしゃいでる様子思い浮かんで微笑ましい。私も時代に取り残されないよう祈りと共にアップデートしようかな。

  5. IoTか…浮世の風がここまで届くとはね。もう“怖い話”が怪談アプリで拡散される時代か。情報流出は怖いけど、少しワクワクもしてしまうのが正直なところ。