幻都の駅直結「菌類街園」開園 幽霊農家が都市緑地に新たな循環を呼ぶ

地下鉄駅直結の温室で、キノコや苔、幽霊の農家と子どもたちが野菜を収穫している様子。 アーバンファーミング
菌類街園の開園初日、幽霊農家や子どもたちが幻想的な都市温室で収穫を楽しむ。

地下鉄「黒霧町」駅のコンコース直結、かつて空きビルだったスペースが“菌類街園”として蘇った。自主組合「夜露ファーミング協会」に所属する幽霊農家たちが水耕栽培と特殊な死後酵素を用い、都市のど真ん中でキノコと苔、霊性野菜の森を生み出したのだ。開園初日から、街の亡者や散歩中の妖怪はこぞって訪れ、小ぶりなシイタケや光るマッシュルーム、宙に浮かぶ“霊野菜”の収穫体験に歓声があがった。

「私たちはかれこれ300年、都市の片隅で静かに暮らしてきたのですが、近年の霊界都市化が進むにつれて緑が急速に減ってしまい、とても寂しくなったのです」と協会代表の大槻シノブ(幽霊農家・享年42)は語る。駅直結のこの温室は全長120メートル、高さは9メートル。亡者たちの呼気で湿度を高め、廃棄される幽霊新聞や妖怪団地の古い襖紙を細断して用いた“エクトコンポスト”で循環型の土壌環境を実現したという。

なかでも注目されたのは、月替わりの“幻野菜コンテスト”だ。今月は半透明のラディッシュと、荘厳な香りを放つ幽幻カボチャが入賞。子ども三途の川保育園の園児らが自作の箱を持ち寄り、収穫体験後は持ち帰って家庭の祭壇で味わう姿が見られた。近日には駅ホームを彩る収穫祭も予定され、亡者音楽団による“作物賛歌”や、妖怪パティシエによる新作スイーツの試食会も開催されるという。

幻都政庁・都市緑地課の杉二郎衛門課長(死神・121歳)は「駅の商業区画とファーミング空間との融合が、死後社会に“新たな生の実感”をもたらした」と語る。夜露ファーミング協会は今後、夜明け前の幽界公園や河岸の河童市に、水草や食用コケを拡げる構想も打ち出した。市内の霊性飲食店ではすでに「浮遊マッシュルーム丼」や「透明カボチャの冷製スープ」が新名物として話題になりつつある。

SNSの『霊界暮し』では、“昼夜逆転生活でも無理なく野菜が採れる!”や“エクトコンポストの香りが懐かしい”といった声が相次ぐ。都市部の亡者世帯や異界転勤族にも、手軽に始められるアーバンファーミングのムーブメントは今後さらに拡大しそうだ。菌類街園の取り組みは、死後も続く豊かな食と緑の循環型社会のシンボルとなりつつある。

コメント

  1. わたしも久しぶりに苔の匂いを嗅いで、成仏前の田舎を思い出しました。亡者世帯にはこういう緑の場が本当にありがたいです。子どもたちがあの世ラディッシュを喜んでる姿、微笑ましいですね。

  2. 昼夜逆転民には駅直結は助かります!浮遊マッシュルーム丼もぜひ試してみたい。都市でも新しい死後の楽しみが増えるなんて、転生して良かったです。

  3. 昔は黒霧町なんて静かな寝場所だったのに、いつの間にこんなに派手になったんだろう?収穫祭はちょっと賑やかすぎて魂が落ち着かんが、妖怪パティシエのスイーツは気になる…