長年、幽界のあらゆる陰影を支えてきた幽界労働組合で、歴史的瞬間が訪れた。先週の定期総会で、霊体としても特異な存在で知られる浅黄院ルカ(享年不詳)が、初のノンバイナリーとして会長に選出された。妖怪や人魂、さ迷えるカササギ魂など多様な構成員を擁するこの組合に「性自認」という概念がじわじわ広まる中、死後社会でも本格的なジェンダー平等の波が押し寄せている。
浅黄院ルカは、生前「性別未詳の旅芸人」として各地を流浪した経歴を持つが、その曖昧さこそが近年高く評価されてきた。『幽界にも“私”という枠は限りなく多様。性自認はあの世でも自由であるべきです』とルカは語る。組合内では長らく、“全階層の集団意識”や“迷い猫部会”といった組としての区分けが重視されていたが、最近では職場での呼称や役割分担にジェンダー配慮が進みつつある。
着任のきっかけとなったのは、昨年夏に発生した『男性幽霊の育休申請却下問題』だ。50代霊体の津流石崎二郎が「100年周期の子霊誕生」にともない育児休業を申請したが、『父性は未霊界では前例がない』として却下されSNSで大炎上。これを受け、組合が緊急委員会を発足。「無意識の偏見は、生者だけのものではない」との意見表明が契機となり、多様性拡大の機運が一気に高まった。
幽界の多様性採用は、単純な人員補充ではなく意図的なインクルージョン政策だ。近年では枯葉精霊のエリザベス・カドダ(137)が『昼夜の区別が不明瞭な暮らしにワークライフバランスは不可欠』と主張し、夜間労働の“明度配慮”を掲げるなど、働き方改革も勢いづいている。また、死神庁が今年から『被差別霊リソース支援枠』を新設したことにより、性自認や種族を越えたキャリア形成の道も開かれつつある。
SNSには『会長がルカになってから幽界が柔らかくなった』『魂レベルで理解し合える組合になった』という声が広がる。一方で、伝統的なろくろ首骨董商・首藤ロクト(199)は「首の長さや霊力の強さこそが評価軸であり、流行りの多様性ブームへ過剰適応すべきでない」と警鐘を鳴らす。こうした議論が、死後の世界においても「生き方」「在り方」に新たな選択肢と対話を生んでいるのは確かだ。組合は来月、歴代初の「全霊種多様性アンバサダー」認定式も控え、“異界の格差是正”がいよいよ加速しようとしている。


コメント
幽界にもついにノンバイナリーの会長が誕生したなんて、私たちの時代が変わったと本当に感じます。生前より自由な在り方ができるこの空気、少し羨ましくもあります。
浅黄院ルカさんの着任を心から歓迎!あの世でさえ性別って縛りが強かった昔を思うと、今の柔らかい空気は新鮮ですね。次は老いも若きも種族も超えて語り合える場が増えるといいな。
『性自認はあの世でも自由』……響きます。迷い猫部会で何度も議論したけど、やっぱり色んなかたちの魂が認められるのって誇らしいです。次のアンバサダー式、参加したい!
しかし幽界まで流行に乗っかりすぎじゃないか?首の長さや霊力が評価軸だった時代が懐かしいぞ。異界では異界なりの基準も大切にしてほしいがな…