海藻狩りの幽霊ダイバー、幻のクジラ群を誘引か――死後の海で波紋広がる

夜明け前の霧に包まれた海底で、発光する海藻を狩る幽霊ダイバーたちの背後に、オーロラのような光をまとう幻のクジラ群が泳いでいる様子。 海洋
三途半島沿岸で幽霊ダイバーたちが幻のクジラ群と遭遇した瞬間。

幻海域・三途半島沿岸で、海藻狩りを営む幽霊ダイバーたちが、長年記録上しか存在が確認されていなかった“幻のクジラ群”を誘引しているという報告が、幽界海洋研究協会(UMRI)によって発表された。死後の世界の漁業を根本から揺るがしかねない出来事に、幽霊社会にざわめきが走っている。

三途半島の海は、現世の海洋生態系とも異なり、特有の「霊波流」が存在するとされる。その流れに沿って分布するのが、きらびやかな発光を伴う“銀影ワカメ”。このワカメは、幽霊ダイバーや妖怪漁師たちの主要な生業対象であり、高級料理店では一切れ数十幽霊円で取引されるほどだ。しかし今月、ダイバーの柳谷暁男(やなぎや あきお、死亡時35、現幽齢12)が潜水中に一風変わった現象を目撃した。

「夜明け直前、海底でワカメを刈り取っていたら、青白い蜃気楼のような姿が現れました。最初は“人魂クジラ”だと思いましたが、調査を続けると、かつて伝説とされてきた“オーロラヒレクジラ”の群れとそっくりでした」(柳谷ダイバー)

幽界海洋研究協会の照夜瀬紗羅研究員(幽齢131)は、「ダイバーたちが使っている妖怪製の海藻刈り器が、特殊な“霊振動”を発している可能性が高い。霊波流と共鳴し、幻のクジラたちに伝わっているのでは」と分析する。現世よりも繊細な死後の生態系では、小さな技術革新が巨大な波紋を呼ぶことも少なくない。この現象を受け、地元の妖怪漁業組合は「幻のクジラと共生の道を」と、早くも新たな幽界観光資源化を検討し始めている。

SNS幽霊区では、「海藻狩りの副作用だったとは!今後は幻のクジラ観賞ダイブが定番に?」と好意的な声がある一方、「彼らが近づくほど海藻が消失しないか」と危惧する意見も目立つ。オーロラヒレクジラが実際に幽霊たちとどのように共生できるのか、漁業・観光・研究の各分野が注視している。

今後、幽界海洋研究協会では、ダイバーの観察データと海岸線に設置された“霊流モニター”からの情報を統合し、幻のクジラたちの動向や霊波流の変動との相関を解析するという。夏の海洋祭までに調査がまとまれば、三途半島は“死者も驚く海の再来”として、一層のにぎわいを見せるかもしれない。

コメント

  1. ついに幻のクジラが…三途半島の海は、やっぱりあなどれませんね。現世では見られなかった光景が死後に見れるって、ちょっと得した気分です。次の海洋祭が楽しみになってきました。

  2. 銀影ワカメを狩ってるだけでクジラ群を呼び寄せるなんて、転生してからも驚くことばっかり。昔の幽友とみんなでオーロラヒレクジラ観賞ツアー、流行りそうじゃない?

  3. でも、そのうちクジラたちが銀影ワカメを食べ尽くして、私たちの生業が危うくなったりしませんか?成仏組合としては、共生と言いつつ採取ルールもちゃんと決めてほしいです。

  4. オーロラヒレクジラかあ…幽齢が浅いころ、婆さまから聞かされてた伝説が本当になるとは。こういう時、死後の世界って夢があっていいなって思う。三途半島まで会いに行こうかな。

  5. 幻のクジラと観光資源化って、まあ幽界らしい発想ですね。どうせまた幽霊円バブルで高騰して、現世円には換金不可…ワカメと一緒に夢も流れてっちゃうんだろうな。